子どもの虫歯防ぐには 1日1回仕上げ磨きを

日本経済新聞 2015.09.30より

1970年代には子どもの9割に虫歯があった。
予防意識が強くなり、現在は虫歯のある子は減っている。
ただ、親が油断すると虫歯だらけになるリスクは依然高い。
子の虫歯を防ぐため親はどうすればよいか。
日経BP社の共働き世帯向け情報サイト「日経DUAL」から、小児歯科専門医・坂部潤さんのアドバイスを紹介する。


虫歯は主に、口の中にある虫歯菌が原因で起こります。
虫歯菌が食べ物に含まれる「しょ糖」を食べ、増殖してネバネバとした酸性の排せつ物(プラーク)を出します。
そのプラークが歯のカルシウムを溶かし虫歯になります。
虫歯菌には数種類ありますが、歯につきやすい性質があるミュータンス菌が一番の原因菌です。
ミュータンス菌が好む「しょ糖」は甘い物のほかご飯やパンなどの炭水化物にも含まれます。
甘い物を食べなければ 虫歯にならないという考えは間違いです。
 
虫歯菌は親から子へ感染します。
虫歯は「ミュータンス菌による感染症」ともいえるのです。
虫歯菌が口内にない人はいないからです。
 
実は、生まれたばかりの赤ちゃんの口内にはほとんど虫歯菌がありません。
しかし乳歯が生え始めたころから、赤ちゃんに接する人(両親など)の唾液を介して感染します。
口移しで食べ物を与えたり、スプーンや箸、コップを共有したりすることを避けても、スキンシップでも感染するので、虫歯菌の侵入を完全に阻止するのは不可能です。
 
遅かれ早かれ感染してしまう虫歯菌ですが、3歳まで気をつければ、その後の虫歯リスクをぐんと減らせます
口の中には様々な常在菌がありますが、3歳までは口の中の菌のバランスが未完成なため、虫歯菌が増殖しやすい環境です。
極力、虫歯菌を口に入れないようにしてこの時期を乗り切れば、常在菌の中にミュータンス菌が占める割合が少ないまま、菌のバランスが定着しやすいのです。
 
赤ちゃんへの感染のリスクを減らすために、親の虫歯は治療しておきましょう。
虫歯が多い親の唾液には虫歯菌が高濃度に含まれ、特に移りやすいので注意が必要です。
 
ただ虫歯菌に感染したとしても、即、虫歯を発症するわけではありません。
食習慣や歯磨き、唾液の質や量など様々な要因が重なって虫歯は起きます。
歯磨きで口内の虫歯菌の量を減らすことが虫歯予防のポイントになります。
 
虫歯になりやすいのは歯と歯の間、歯と歯ぐきの間、奥歯の溝、奥歯と頬の間、奥歯と舌の間などです。
歯が生え始めたら、1、2本でも歯ブラシを使って磨きます。
子どもは歯ブラシをかんでしまうので、本人用と親の仕上げ磨き用の歯ブラシを用意しましょう。
歯間の汚れ落としのためフロスの併用もお勧めです。
 
仕上げ磨きは、子どもを膝の上に寝かせる姿勢で1日1回は行います。
1歳半~2歳半のイヤイヤ期には嫌がる子も多いと思いますが、実はこの時期は最も虫歯になりやすい。
奥歯が出始めて、虫歯の発生率がぐんと高まるのです。
板のような形の前歯に比べ、奥歯は形状が複雑で汚れがたまりやすいからです。

1日1回仕上げ磨きを

 
子どもが歯磨きを嫌がらないためには、同じ時間に同じ人が、同じシチュエーションで行うようにします。
仕上げ磨きでは、歯磨き粉は使わないほうがいいでしょう。
あおむけの体勢で口の中が泡立つと苦しいので、歯磨きを嫌がってしまいます。
 
歯ぐきと歯の境目をきちんと磨くには、歯ブラシを45度の角度で当てます。
奥歯と頬の間を磨くときは、口を「イー」の形にするより、半開きにするほうがうまく磨けます。
歯ブラシをぐっと押し当てて小刻みに動かすと、毛先が溝にきちんと入ります。
 
歯が痛くなってから歯科医院を受診すると、子どもは「歯医者さん=怖いところ」と感じてしまいます。
「定期的に通う、歯をキレイにしてくれるところ」と思えるように、歯が生え始めたら歯科医院を探すことを勧めます。
3、4カ月に1度、虫歯をチェックしてもらいましょう。
 
では、乳歯から永久歯への生え替わりの時期は、何に気をつければよいでしょうか。
 
子どもの乳歯は5歳から12歳にかけて永久歯に生え替わります。
この時期は乳歯と永久歯が混在しているため、歯に段差ができたり、歯肉が歯に覆いかぶさったりして歯磨きがしにくい状態です。
生え始めて2年以内の永久歯は軟らかく、虫歯になりやすいので注意が必要です。
 
虫歯はいくつかの要因が絡み合って発生しますが、ダラダラと飲食することと清掃不良が二大要因です。
おやつは1日1回までと決め、ダラダラと食べ続けないこと。
そして口内に長い時間とどまるあめやガム、キャラメルは なるべく避けましょう。
 
ただ、プラークが歯に付着し、治療が必要になるほど穴が開くまでには数週間かかります。
理論上、1日1回きちんと歯磨きができていれば、虫歯を防ぐことができます。
虫歯になった部分は、月単位で歯ブラシが当たっていない場所と考えられます。
 
唾液の量が減る就寝中は、最も虫歯のリスクが高まります。
親が1日のうち1回仕上げ磨きをするなら、夜寝る前がお勧めです。
日本小児歯科学会では「8歳までは親による仕上げ磨きが必要」としています。
小学校入学と同時に仕上げ磨きをやめる家庭もありますが、このころは6歳臼歯という奥歯が生え始める時期。
歯肉が 覆いかぶさっている生えたての6歳臼歯に、早くも虫歯の穴が開いているケースも見られます。
 
小学生になっても夜は親が仕上げ磨きをし、朝は本人だけで歯磨きをさせ、少しずつ自分で磨くことに慣れさせるとよいですね。
仕上げ磨きをやめていいかどうかは、かかりつけ医に相談しましょう。